仙境の花

青灰色の 重たげな空
風に舞うのは 真白の六花(りっか)
冬に開いた 天空の花は
紅の蕾を 静かに包む

常盤(ときわ)に緑の 葉に守られて
密やかに眠る 早春の使者
風の境を 指折り数えて
解放の時を 静かに夢見る

もしも歌人の 語る世界が
冬の白風(しろかぜ)に 凍るならば
花のお茶で 癒しましょう
もう一度 元気が戻るように

誰も知らない 仙境の奥
流れる雲の 海を見ながら
いつもどこかで 願っていたの

佇む姿に 気づいてほしいと

だから 香りを飛ばしていたの
眠るあなたの 夢の世界に

春の霞が たなびく大空
風が運ぶは 花呼びの歌
最初に咲いた 瑞香の香は
待ちわびた季節の 訪れを告げる

赤く実った 小さな木の実
死んでしまうの 触れたら駄目よ
花の姿で 役に立てても
実になれば 同じことはできないの

誰も知らない 仙境の奥
あなたはここに 気づいてくれる?
春の香りを たどってくれる?

紅の花に 気づいてください

夢の 香りを忘れないでね
あなただけが知る 仙境の鍵

誰も知らない 仙境の奥
冬と春との 季節の境で
あなたはやっと 見つけてくれた

あなたの夢に 届いた香りに

あなたが それを望むならば
人間(ひと)の世界に ともに行きたい