常夏の乙女

夏草の間(はざま)を舞う 金色の蛍火
魂の半身を探してるのね
この世にひとりだけ 残されたこの身も
いつかは 誰かに迎えられるの?

迎えてくれたのは 背の高い貴公子
琴の音で心を癒してくれた 
この人と生きていける そう思えたの

藤襲の衣(きぬ)で競う 華やかな戦も

あなたは愛してくれたけれど
都の荒波は 厳しすぎて
なにも持たない身では 渡れないの

あなたを愛した 心だけを連れて
新しい明日を 探しに行きます

せめて忘れないで わたしのことを
ひと夏の記憶を 置いていくから 

夕顔の白い花が 咲く夏の夕暮れ
あの人のことを思いだしてる
都に置いてきた 過去の恋模様
あの人は おぼえているかしら?

心の扉叩く 白い花を詠む和歌(うた)
返す和歌(うた)を贈っていいのかしら?
でも さみしさが打ち消す 戸惑いを

紫苑の襲で迎える 艶やかな一夜

夜の花に似た もうひとつの恋
あなたは心に 灯をくれた
いまは酔わせて 生命(いのち)も死もこえて

さよならあなた 愛したひとたち
彼方の世界の 呼び声がするの   

自由な風になれば 最初に愛した
あの人にもういちど 会えるかしら